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23-ICOSに参加しましたPART1

23-ICOSで講演してきました。

ICOS(International Conference on Organic Synthesis)はIUPAC主催の国際会議の一つ。第1回の1976年から隔年で開催され、全合成、触媒、方法論開発、医薬化学、工業化学といった有機合成化学の広い範囲を対象としてます。同じくIUPAC主催のIMCOSとは交互に開催されているとのこと(コロナ禍でずれたため今年は両方開催)。今回参加してハイレベルの国際会議であることをひしひしと感じましたし、貴重な経験もさせてもらいました。正直に白状しますと、参加するまでこの学会を知りませんでした。似た響きの加熱式タバコよりも遥かに歴史ある学会でした。もう一生忘れません。

講演者も超豪華。基調講演だけでもBenjamin List、Qi-Lin Zhou、Erick M. Carreira、Gregory C. Fu、Jin-Quan Yu、Phil S. Baran、Masayuki Inoue、Marisa C. Kozlowski、Mikiko Sodeoka、Yong-Qiang Tu、Ang Li (Thieme–IUPAC Prize受賞講演)と錚々たる顔ぶれ。今回は潤さんが招待講演で声が掛かったのもあり、一般参加で口頭発表をしてきました。

 

HPより転載

中国ビザ申請
コロナ禍以降、中国への渡航にはビザが必須になりました。詳細は潤さんが別記事で紹介してますが、申請に結構時間がかかりました。ただ、色々な先生から話を窺うと、招聘状などの書式に関して大使館側と幾度もやり取りしたとのこと。僕らが受け取ったものは、既に十分揉まれていたようで、感謝したいと思います。ちなみに僕らは通常ビザでしたがポートビザは1週間ほどで取得できるようです。その「裏技」を使ってこられた先生もおられました。

いざ上海へ
中国東方航空の午前成田発便で上海浦東空港へ。フライトは3時間ほど。着いて英語が通じないことは驚きでした。入国審査やインフォメーションカウンターですら通じなかった時は終わった、、、と思いました。日本に来る外国人の気持ちが少しだけ分かりました。空港からはタクシーでホテルへ。いざチェックインしょうとすると、怪訝そうな顔をされ、予約したか?と聞かれました(翻訳アプリを使って)。いやいや、そんな馬鹿な。タクシーの運転手に見せた予約画面を見せ、やり取りしていると、なるほど、分かりました。実は着いたのは同系列の違うホテル。翻訳アプリを使って会話しながら、またタクシーを呼んでもらい、無事目的のホテルに着きました。ちなみに中国の物価は日本と大差ないですが、タクシーだけは日本の半額以下でした。

その後、学会会場のZhangjiang Science Hall(張江科学会堂)に向かい一足先に中国入りしていた潤さんと合流。レセプションでは林先生、澤村先生、依光先生、Jackも一緒でした。ビザの取得はどの先生も大変だったようで、苦労話を聞かせてもらいました。その後は日本人の宿泊するホテルに行き二次会。レストランは既に閉まってましたが、飲み物だけならと席に通してくれました。ジントニックをオーダーするも、作り方が分からないとのことで、トニックウォーター、ジン、レモン、氷が別々に出てきて、セルフで作る形式でした。その後店を閉めるのでロビーで飲み続けることに。日本人はいつまで飲むんだという視線がやや気になりましたが、楽しい時間を過ごしました。澤村先生の海外でのお話は特に印象的で、スリには注意しようと思いました。

 

いよいよ23-ICOS開催

会場に入ると、まずその広さに圧倒されました。パラレルセッションでしたが、一番大きい会場は1000人以上は入るんじゃないでしょうか。午前中はBen List、袖岡先生、Eric Carreira、Qi-Lin Zhou(外国人教授敬称略)と基調講演が続いたのち、午後に自分の発表でした。個人的にはZhiweiやPeter Zhangは研究分野的に近く、一目会ってみたい研究者でした。座長もEric Miggersにして頂き、もう緊張と興奮が止まらない。15分の持ち時間を12分を発表に、質疑に3分使いました。憧れのBurkhard Königともう一人から質問を頂き、無事終了。講演後も数人から質問してもらい、それなりに興味を持ってもらえたようで一安心。英語講演としては人生で一番の大舞台で、良い経験をさせてもらえました。

全部書いていると長くなりそうなので、印象だった講演をいくつか。Ongoingが多かったので詳細は触れません。
・Zhen Yang 光反応を使ったKey Stepを抽出して話す講演で、ほとんどが光反応について話しだったのが印象でした。分子内[2+2]/retro-Mannichを経るユニークな骨格構築では、光触媒の選択が秀逸でした。
・Mingi Dai 前半はMolecular Editing後半は遷移金属触媒を利用した全合成という構成。個人的には鍵工程ではない箇所のジアステレオ選択的炭素炭素結合形成が勉強になりました。
・Gong Chen ペプチドのアミノ基選択的モノメチル化反応。室温、4時間で反応が完結する良い反応です。加熱条件下では不飽和アルデヒドが得られます。Chemxrivが出てました。
・Zhiwei Zuo 僕の二つ前の講演でした。ただでさえ緊張してるのにCOOLなケミストリーをぶっ込んでくるのはやめてほしいと思った講演でした。これもScienceにもう出てました。
・G.C.Fu 化学もさることながらプレゼンの組み立て方が勉強になりました。抽象的な括りから最終的になぜその反応がChallengingなのかに落とし込む流れは参考になります。リガンドが特殊で個人的に気になっています。
・Tobias Ritter 実は彼の講演を聞くのは初めて。これほどダイナミックな講演とは知りませんでした。TT chemistryのおさらいとも呼べる講演で、化学/位置選択性の発現理由が分かりやすかったです。個人的には、時間がなくスキップされてしまった生体高分子の修飾が聞きたかったです。
・Dawen Niu しばらくフォローしていなかったんですが、アリルスルホンなどを脱離基とするラジカルグリコシル化が大幅アップデートしてました。無保護糖で水/DMSOで進行するのはすごいですね。Glycosylation Kitも秀逸だと思いました。

そして4日目は潤さんの講演。Jinbo Huの次で、メイン会場をパーティションで半分に区切ったZhangjiang Hall Bでの講演でした。内容は極性およびラジカル反応の両方のアプローチでC–F結合を切るというもの。講演では自分やジルコノセンの紹介もして頂きありがとうございました。質疑ではMing-Yuから、講演後も数人に囲まれて質問を受けていました。

といったように23-ICOSは豪華な学会でしたが、講演だけでなくBanquetやディナークルーズなども豪華でした。次回はそのあたりについて書こうと思います。
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太田英介
趣味は唄うこと、バドミントン、ランニング、路地裏巡りなど。守破離の精神をモットーに異分野をつなぎ、ニッチな世界で先駆者を目指す。まだ見ぬ分子・隠された機能・未開の反応形式を夢見ながら、学生たちとより多くの感動の瞬間を分かち合える研究者でありたい。

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