怒涛の学位論文シーズンも終わり新年度が始まりました。ところで、参考文献でタイトルを表記しなければならない時もあるかと思います。そんな時、指導教員から「ここは大文字」や「ここは小文字」と赤ペンが入った人もいることでしょう。これは、キャピタライゼーションルール (Capitalization Rules)という、キャピタライズ(Capitalize)=単語の最初のアルファベットを大文字にするとっても面倒な英文のルールによるものです。めんどくさいですね。
そもそも、なぜ言語の多くに大文字小文字の区別があるのでしょうか?漢字とカタカナとひらがなを操る日本語話者が声を荒げるのも変な話ですが笑
歴史的には、直線を多く用いる大文字が先にできていたようです。その当時、文字は何かに刻むもので、直線がメイン。その後、紙(羊皮紙)などの発達に伴い、筆記具でなぞるように書くようになった際、直線じゃなくて良くない?となり、曲線多め・画数少なめな小文字が登場したようです。まさに、日本語における漢字→カタカナ→ひらがなのような流れと近しいですね。キャピタライゼーションのルールは活版印刷が普及するに従い、読みやすさや見た目などから決まっていったようです。
大文字だけ、小文字だけ、より読みやすいのはわかりますが、単語の先頭だけ全て大文字にしている訳ではなさそうですよね。
実際には、元論文のwebサイトではなくPDFを確認、もしくは、最近のACS系列論文で引用してあればそれを確認でしょうか。ただ、著者も編集者も人の子、出版された論文全てにミスがないとは限りません。Referenceを吐き出してくれるツールやwebサイトも存在しますが、それも完璧ではないようなので、基本ルールを覚えた方が早そうですね。基本ルールをまとめてくれているweb記事はいくつかありますが、個人的には、株式会社STUDIOのwebページがわかりやすい気がします。もちろん、それぞれのドキュメントの書式(卒論・修論・D論のスタイルが決められているとき、投稿雑誌のポリシー)に合わせるべきなので、そちらの確認も抜かりなく!(ACS Style Quick Guideなど)
ここからは、多くの人が引っかかる所をいくつか書いていきます。
コロンの後ろの冠詞
コロンの二つの点のうち下の点はピリオド由来だと覚えればわかりやすいですね。
例) 〇〇: A □□ (間違い 〇〇: a □□)
ハイフンの後ろの単語
ハイフンがない場合に大文字にすべき単語は基本的に大文字にしておく方が安心です。
例) Ring-Opening Fluorination of Bicyclic Azaarenes
短い代名詞とbe動詞
代名詞は短いので、小文字のまま残しがち。be動詞はあくまで動詞なので。
例) it, itsとbe, is, are, wasなど
一般的な語彙の大文字・小文字は良いですが、化学用語の場合はどうでしょうか?いくつか注意点を列挙します。
化合物名は先頭のみ大文字
ハイフンで繋がれた一単語として考えましょう。
例) 1,3,7-Trimethyl-3,7-dihydro-1H-purine-2,6-dione
ただし、スペースが入る場合は一単語カウントできないので、別で考える。
例) Ethyl 3-Oxobutanoate
位置や置換パターンを示す接頭語
これらは記号としてこの字面が大切なので、先頭のアルファベットは大文字にしません。
例) n-, sec- (s-), tert- (t-), cis-, trans-, ortho- (o-), meta- (m-), para- (p-), gem-, vic-, asym.-, sym.-, ipso-, meso-, peri-, cine-, and tele-.
D-体 L-体
DやLはやや小さいフォントサイズでの表記がマナー
例) D-Glyceraldehyde (Dだけ8 ptで他が10 ptぐらい?)
種名の後半
天然物を扱っている人たちの間では常識なんですかね?(種名を書くような研究はしていないので詳しくないですが、、、)
例) マツタケ(松茸、Tricholoma matsutake)
「こんなんどっちでもええやん。どちらにせよ参考文献には辿り着けるやろうし。知らんけど。」と思った方いるかもしれません?しかし、全体を通して、統一のルールに貫かれた文章は美しく、力をもつ気がします。確かにとっても細かいところですが、神は細部に宿る(God is in the details)そうですし、同時に悪魔も細部に宿るそうなので。変なとこで、足を引っ張り、他にも間違いがあるのでは?と思われるよりも、丁寧に細部までこだわった「作品」を作り出したほうがいいと思いませんか?
加藤健太
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