先日、サンシャイン水族館で開催されている「もうどく展 極」に行ってきました!毒を持つ様々な生物が展示されており、とても興味深かったです。今回は特に気に入った毒生物たちを紹介しようと思います。
その前に、毒を英訳するとpoison・toxin・venomが出てきますが、これらの違い、分かりますでしょうか?僕は最近知ったのですが、毒全般をpoison、生物が産生する毒をtoxin、毒腺から作られる毒(ヘビ毒やクモの毒など)をvenomと呼ぶそうです!もうどく展 極は展示の大半がtoxinでした。
展示されていた生き物たち
まずは海洋毒生物の王道、フグです。フォルムがかわいいですよね。いつか食べてみたいです。フグの種類にもよりますが、肝臓などの内臓に毒を持っているため、それらの部位を取り除いて食べるらしいです。センニンフグなどは筋肉にも毒を持っているのでどう頑張っても食べられません。最後の晩餐にするなら別ですが。展示されていたのはサザナミフグ。優しい色合いで水玉模様が特徴的です。かわいい見た目して LD50(マウス腹腔) = 8.7 μg/kgの超猛毒を持っているなんて想像もつきません。毒の名前はテトロドトキシンで、フグ科の学名Tetradontidaeとtoxinを合わせた言葉だそうです。フグだけでなく、イモリやスベスベマンジュウガニも同じ毒を持っています。作用機序はナトリウムチャネルの不活性化です。超簡単に言うと、神経伝達が阻害されて心臓が徐々に止まっていきます。怖いですね。また、トリカブトに含まれるアコニチンは真逆の作用をします。これ使って治療薬とか作れないんですかね?
続いてはイソギンチャクです。イソギンチャクも毒を持っていますが、そこまで強いものではなく、刺されてもちょっと痛みを感じる程度らしいです。獲物が近づくと刺胞と呼ばれる組織を突き刺し、毒を注入します。僕が惹かれたのはイソギンチャクではなく、共生関係にあるカクレクマノミです。映画「ニモ」で有名だと思いますが、オレンジと白の鮮やかな配色を持った小さな魚です。こいつらは毒を持っているイソギンチャクを住処とし、外敵から身を守ってもらっています。片やイソギンチャクは餌を分けてもらったりしているのでwin-winの関係です。クマノミがイソギンチャクに刺されない理由は、体表を覆う粘液にあるそうです。クマノミの粘液中に含まれるマグネシウムイオンの濃度は海水より高く、イソギンチャクに獲物だと認識されないそうです。なんでかは知りません。
次はヤドクガエルです。名前からしてヤバそう。その名の通り矢の先に塗って狩りに利用されており、特に南米の狩猟民族がよく使っているそうです。青、黄、緑などのカラーがあり、どれも毒々しい色です。特にきれいだと思ったのは青色の個体。コバルトヤドクガエルと呼ばれています。持っている毒はバトラコトキシンで、生物が作る毒の中で2番目に強いと言われています。そんな仰々しい肩書きを持ったヤドクガエルですが、体内で自ら毒を合成しているわけではなく、微量のバトラコトキシンを持ったアリなどの虫を捕食し、それが蓄積することで毒性を発現しているそうです。同様に、実はフグも海洋細菌などを取り込み、生物濃縮で蓄積することで毒性を得ています。
最後に紹介するのはアオブダイです。名前の通り青いブダイです。とは言ってもあまり青くない個体もいて、今回見たのもそこまで青いか?と思いました。頭のコブが特徴的な魚です。とは言ってもそこまでコブ出てるか?って思いました。あんまりアオブダイっぽくないアオブダイですね。英名はparrot fishで、確かにオウムに似てるかもしれない、と納得しました。こいつの持つ毒はパリトキシンで、生物が作る毒の中で最強と言われています。LD50(マウス腹腔) = 0.63 μg/kgなのでテトロドトキシンよりも10倍以上強いことになります。恐ろしいですね。こいつも例によってイワスナギンチャクという餌から毒を得ています。パリトキシンは化学的にも面白い物質で、不斉炭素を64個も有している分子量2680の巨大分子です。こんな複雑な天然物、人の手で合成できる日が来るんだろうか。そう思っていたらハーバード大の岸先生が既に達成していたみたいです。とんでもない偉業です。
いかがだったでしょうか。ここで紹介したもの以外にもたくさんの毒生物や小話が展示されていたので、興味を持った方は是非足を運んでみてください!
高橋悠粹
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