光レドックス反応

ピロリジンのC–N結合開裂反応の開発

Selective C−N Bond Cleavage in Unstrained Pyrrolidines Enabled by Lewis Acid and Photoredox Catalysis
Kazuhiro Aida,# Marina Hirao,# Tsuyoshi Saitoh, Takashi Yamamoto, Yasuaki Einaga, Eisuke Ota,* and Junichiro Yamaguchi*
J. Am. Chem. Soc. 2024, ASAP
DOI: 10.1021/jacs.4c13210

環ひずみの小さい環状アミンの不活性C–N結合の開裂は、依然として有機合成化学における難題である。我々はルイス酸と可視光レドックス触媒の協働触媒系を利用して、N-ベンゾイルピロリジンの還元的C–N結合開裂を達成した。アミドへの一電子移動を起点としてC2–N結合開裂が進行する。サイクリックボルタンメトリーやNMR解析から、ルイス酸が可視光レドックス触媒からアミドカルボニル基への一電子移動を促進する上で重要であることが示された。さらに、本触媒系はヒドロキシプロリン誘導体をアジリジン、γ-ラクトン、テトラヒドロフランへと変換することにも成功しており、不活性C–N結合開裂が新たな合成戦略の拡張に貢献する可能性を示した。

ジルコノセン/可視光レドックス触媒系とは別系統の反応として進めていたピロリジンの開環反応がようやく形になりました。チタノセンでアジリジンが開くならジルコノセンを使えばピロリジンが開くんじゃないか、そんな馬鹿げた発想で始めたテーマです笑。エポキシドの開環反応がひと段落した後、卒業生の平尾さん(現在Ritter研博士課程)が中心で進めてくれました。最初に数%ピロリジンが開いたときは本当に衝撃でした。最終的にジルコノセンはどこかにいってしまいましたが笑、珍しい形式のC–N結合開裂反応が世に出せたと思っています。平尾は有機反応若手の会で、僕は23-ICOSで賞をもらっており、その意味でも思い入れのあるテーマです。反応条件がシンプルなのでイントロは結構考えましたが、今までの一電子還元との差異を説明できる今の流れに落ち着きました。分子編集の文脈は、潤さんのアドバイスで始めたヒドロキシプロリンの各種変換には当てはまるだろうと考え入れました。慶應の山本さんには早稲田に御足労いただきCVを伝授してもらいました。また筑波のボブさんには投稿直前の追い込み時期にCV測定に関して教えを乞いました。学生時代にお世話になった先生方の力も借りサブミットしたものの、結果はリサブミット。かなりの指摘がありましたが、会田が大奮闘してくれてアクセプトを勝ち取りました。リバイスで潤さんにも様々なアドバイスをもらい総力戦で掴み取ったJACSです。皆様本当にありがとうございました。平尾、会田おめでとう!!

太田英介

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