Transformative Reactions in Nitroarene Chemistry: Advances in C–N Bond Cleavage, Skeletal Editing, and N–O Bond Utilization.
Iizumi, K.; Yamaguchi, J.
Org. Biomol. Chem. 2025. 23, 1746-1772 (Review).
DOI 10.1039/D4OB01928H
ニトロアレーンは有機合成において非常に多用途な構成単位であり、さまざまな反応で重要な役割を果たしている。代表的な変換としては、ニトロ基が強力な電子求引基として芳香環を活性化すると同時に、置換を促進する脱離基としても機能する、求核芳香族置換(SNAr)反応が挙げられる。加えて、ニトロ基の直接変換、たとえば還元によるアミンやカルボン酸の合成、およびイプソ置換型のSNAr反応も広く研究されてきた。オルト位のニトロ基と隣接置換基との相互作用も、選択的変換を可能にするユニークな機会を提供する。しかしながら、これらの確立されたプロセスを除くと、ニトロ基の直接的な変換はこれまで比較的限られていた。近年では、ニトロ基の変換に対する新しい手法が著しく進展している。本総説では、ニトロアレーンの革新的な変換に関する最新の進展に焦点を当て、以下の三つの主要カテゴリを中心に論じる:(i) ニトロアレーンにおけるC–N結合切断を伴う官能基変換、(ii) N–O結合切断によって生成されるニトレン中間体を経由する骨格編集、(iii) N–O結合切断を通じた酸素源としてのニトロアレーンの利用。これらの進展は、現代有機合成におけるニトロアレーンの利用価値が拡大していることを強調するものである。
このたび、D3の飯泉くんとともに、ニトロアレーンの最新の利用法に関する総説を執筆いたしました。私たちの研究では主に、クロスカップリング反応における求電子剤としての利用に焦点を当てていますが、近年ではニトロアレーンの新たな反応性や多彩な用途が数多く報告されており、注目を集めています。本総説では、それらの最新の知見を包括的に整理し、ニトロアレーンの可能性を広くご紹介しております。ご興味のある方は、ぜひご一読いただけますと幸いです。
山口潤一郎
