Metal-Catalyzed Methylthioation of Chloroarenes and Diverse Aryl Electrophiles.
Toyoda, S.; Iizumi, K.; Yamaguchi, J.
Chem. Sci. 2025. 16, 11559-11567.
DOI 10.1039/D5SC01428J
本研究では、クロロアレーンおよび多様な芳香族求電子種に対する金属触媒によるメチルチオ化反応を初めて開発し、反応性の低い基質の官能基化における触媒や中間体の失活という長年の課題を克服しました。この問題を解決するために、メチルチオラートアニオンをその場で制御放出できる新しいアニオンシャトル型メチルチオ化剤である4-((メチルチオ)メチル)モルホリンを設計しました。これにより触媒毒化を防ぎ、反応性を向上させることが可能となりました。本手法により、クロロアレーンのみならず、ブロモアレーン、アリールトリフラート、アリールトシラート、アリールピバレート、アリールニトリル、アリールカルボン酸など、幅広いアリール求電子種の効率的なメチルチオ化が可能になります。開発した系は優れた官能基許容性を示し、医薬品や天然物の誘導体化にも適用可能です。さらに詳細な機構解析により、このメチルチオ化剤の卓越した効率を支える要因を明らかにし、実用的条件下でのC–S結合形成に新たな知見を提供しました。

豊田論文第一号!卒業した飯泉との共同研究です。発見したのは飯泉、それを4年次にすぐに引き継いで、たくさんの求電子剤と反応させることができました。そこまでは順調だったものの、機構解明で低迷。かなり大変でした。こんなものかなとChem. Sci.に投稿すると、なんとエディターリジェクト。さすがにそんな仕打ちはないと思い、抗議をしたら、ちゃんと審査に回してくれました。審査結果は高評価だったものの、大量のリビジョン要求が。それに1つ1つ答えていたら、さらに3ヶ月がたち、最終的にはなんのクレームもなくアクセプト。審査段階でとても良くなった論文の1つです。学振の執筆で一皮むけた豊田さん。いろいろとやりたいことはあるようで、博士っぽくてなによりです。このまま全力で駆け抜けてくれることを期待します。おめでとう!
山口潤一郎