Modular Synthesis of Heptaarylindole
Suzuki, S.; Asako, T.; Itami, K.; Yamaguchi, J.
Org. Biomol. Chem. 2018, Accepted Publication.
DOI: 10.1039/C8OB00993G
ベンゾヘテロール化合物は機能性分子における最重要骨格である。従ってそれらの効率的合成法の開発は、現在においても有機合成化学における大きな課題である。例えば、インドールの機能を司る置換インドールは、ベンゼノイド化合物の環化反応、数多に報告されているインドール合成法を用いるか、ハロゲン化/金属化インドールのクロスカップリング反応により合成が行われてきた。近年、遷移金属触媒を用いた炭素—水素(C–H)結合の直接官能基化により置換インドールを合成する手法が精力的に行われている。その結果、未だ制限がありつつも、インドールのC2–C7位また窒素官能基N1を含むすべての部分を直接官能基化できるようになった。しかしながら、多数の置換基を導入する多置換インドール合成に関しては未だ効率的な手法は限られ、特に3つ以上の異なる官能基を効率的に導入する手法は限られている。他のベンゾヘテロールの合成法に関しても同様の合成上の問題を抱えている。これらが、多置換ベンゾヘテロール化学の化学的・物理学的性質・応用への進展を妨げているといっても過言ではない。
一方で我々は、C–H官能化反応を含めたカップリング法/環変換反応を利用した、多置換アリール芳香族化合物のプログラム合成を確立している。その標的分子と1つして、ごく最近ベンゾへテロール類の多アリール化に着手し、ヘプタアリールインドール(HAI: heptaarylindole)の世界初の合成に成功した。4つの簡便な部品(ジアリールインドール・アリールボロン酸・アリールブロモアセチレン・アリールアジリジン)を繋げイナミド中間体とした後に、逆電子要請型分子内[4+2]付加環化反応、続く酸化反応によるペンタアリールインドール(PAI)の合成、続く2度のアリール化反応によってHAIを合成した。また2つのペンタアリールインドールをつなげてペンタアリールインドールダイマーも合成することができる。このようにインドールに自在にアリール基を導入できる方法論の確立に成功した。本法は、アリール基に限らず他の置換基にも応用可能であるため、現在本方法論を用いた有用物質合成を行っているところである。
鈴木博士(名大伊丹研究室)との共同研究です。最終的に面白い合成法を彼が考えてくれて、主体的に進めてくれました。最終的には浅子くんも加わって仕上げた論文ですが、うーんなかなか運が悪かった。賛否両論あり、本法の可能性を理解してくれる人には絶賛でしたが、有用性の部分でかなり突っ込まれました。有用性なんて個人的には50歩100歩だと思うんですが。フルペーパにして臨みましたが、時間切れ。最終的に論文のトランスファーが一番時間が早かったので、Organic & Biomolecular Chemistryに。最終的には歴史が証明してくれます。僕的にはかなり好みな論文です。
山口潤一郎