本年7月、我々の開発した*1新規ジホスフィン配位子「dcypt」*2が関東化学から発売されました。
本配位子は嵩高いシクロヘキシル基とチオフェンを基本骨格に有する全く新しいジホスフィン配位子であり、C-O結合の活性化反応などに大変効果的です。
特徴
- 2つの嵩高い置換基により不安定な反応活性種の寿命を延ばす
- 嵩高い置換基と配位角の大きさが還元的脱離を促進する
- 電子豊富なジアルキルアリールホスフィンであるため、不活性結合の酸化的付加を促進する
- 2つのリンがsp2結合でつながっているため、平面配位が容易
このような特徴により、すでに
- 脱カルボニル型ジアリールエーテル合成反応 (J. Am. Chem. Soc, 2017, 139. 3340.)
- アミノアセトニトリル類を用いたフェノール誘導体のシアノ化反応 (Org. Lett, 2016, 18, 4428,)
- 芳香族エステルの脱カルボニル型アルキニル化反応(Chem, Lett. 2017, 46, 218.)
- カルボニル化合物とフェノール誘導体のカップリング反応(Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 6791; Chem, Commun, 2015, 51, 855.)
- イミダゾール類とエノール誘導体のC-Hアルケニル化反応 (Chem. Sci, 2015, 6, 6792.)
などを見出しています。これらの反応はdcyptが劇的な配位子効果を示す一例です。現在も精力的に反応開発を行っており、新規有機反応の創出の要となっています。
興味がありましたらぜひお買い求めください。
*1: 名古屋大学伊丹健一郎教授との共同開発
*2: (3,4-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)チオフェン) 3,4-bis(dicyclohexylphosphino)thiophene。もしくは開発者の学生の名前をとって3,4-bis(dicyclohexylphosphino)takise と呼ばれる