脱芳香族化反応

触媒で三分子をつなげて芳香環を壊す

Pd-Catalyzed Dearomative Three-Component Reaction of Bromoarenes with Diazo Compounds and Allylborates
Komatsuda, M.; Kato, H.; Muto, K.; Yamaguchi, J.
ACS Catal. 2019, ASAP.
DOI: 10.1021/acscatal.9b03461

今回、パラジウム触媒存在下ブロモアレーンにジアゾ化合物、アリルホウ素化合物を一連結させる新規脱芳香族的官能基化反応の開発に成功した。成功の鍵は、ジアゾ化合物を用いることでパラジウムカルベンを経由して、パラジウムベンジル錯体中間体を発生させたことである。ナフタレンやベンゼン類に加え、ヘテロ芳香族化合物も脱芳香族化できる。過剰量の芳香族分子を必要としていた従来の不活性なベンゼン類の脱芳香族的官能基化法に比べ、一当量の基質のみで反応が進行するという利点をもつ。この利点を生かして、実際に医薬品化合物の合成終盤での脱芳香族化にも成功した。

小松田くんの筆頭著者二報目!昨年の科研費締切間際に思いついて研究を開始したこの反応、小松田くんの綿密かつ怒涛の実験のおかげでここまで仕上がりました。急ぎで仕上げたかったので当時B4のできる子加藤くん(現M1)を投入し、超強力タッグを組んでの成果です。予想通り化合物の不安定さが最後まで足を引っ張りましたが、小松田くんの努力と根性でどうにかしてくれました。ほんとうに感謝。本研究ではずっとやりたかった医薬品のような複雑分子を合成終盤で脱芳香族化もできました。実は5月に満を持してsubmitしたのですが、本論文の査読プロセスで世界の評価の厳しさを再認識することに。無事に出せて今はホッとしています。まだまだ課題は多いですが、それはこれからのお楽しみということで。

武藤慶

TOP