Dearomative Allylation of Naphthyl Cyanohydrins by Palladium Catalysis: Catalyst-Enhanced Site Selectivity
Yanagimoto, A.; Komatsuda,M.; Muto, K.; Yamaguchi, J.
Org. Lett. 2020, ASAP. DOI: 10.1021/acs.orglett.0c008970
芳香族シアノヒドリンホスファートの脱芳香族的アリル化を見いだした。以前、ベンジルホスファートの脱芳香族的アリル化を開発したが、得られる生成物が不安定であり、合成的有用性に課題があった。今回、生成物の安定性の確保と、生成物がもつα,β不飽和ニトリルの反応性を活かした環上の化学修飾への展開を見据え、シアノヒドリンを出発物質とすることとした。当初の予想に反し、望まぬベンジル置換が競合する難題に直面したが、触媒の構造改変により脱芳香族的アリル化を選択的に進行させることに成功した。
柳本の1報目の論文。小松田は4報目。小松田の前報のextensionという位置づけです。以前の報告では生成物が不安定すぎて合成的には「使えない」という問題点をどうにかしたいなぁ、と思ってはじめました。正直はじめはただシアノ基つくだけだし、やってみるか、という感じでしたが、これまで起こってなかったベンジル置換がドカドカ進行するという難点に直面しました。けど、「ピンチはチャンス」ということで、柳本の怒涛のスクリーニングのおかげで、構造はシンプルだけど、機能的には面白そうな触媒(配位子)にたどり着き、ベンジル置換をほぼ制御することができました。選択性の触媒制御ってやっぱり気持ちいいですね。当初の目的だった生成物の誘導化もバリエーションが増えました。ナフタレンしか使えなかったりと基質制限はありますが、今回の研究で得られた知見はかなり大きいです。おめでとう!!
武藤 慶
PS
COVID-19の影響で、論文記念写真はzoomのスクショ。落ち着いた頃にはきっといい思い出になるんでしょうね。