フッ素化反応

フッ素化反応2010-2020

Suto, S.; Yamaguchi, J.

J. Synth. Org. Chem. Jpn 2021, 79, 910-967. DOI: 10.5059/yukigoseikyokaishi.79.910

フッ素は医薬品や農薬,材料科学の分野において最も重要な原子のひとつである。特に医薬品においては,現在様々な含フッ素医薬品が存在する(Fig. 1)。これはフッ素原子の3つの特徴に起因する。1つ目はフッ素の小さな原子サイズである。フッ素の原子半径は水素に次いで小さいため,化合物のC–H結合をC–F結合に置換しても生体内では区別されない。2つ目は,フッ素原子の高い電気陰性度である。C–F結合はC–H結合に比べ強固であり,生体内の酸化的代謝に対する安定性が向上する。3つ目は,フッ素を導入による脂溶性の向上である。これにより脂溶性が向上し生体内に吸収されやすくなる。したがって,医薬品へのフッ素導入は積極的に検討されており,それに伴い新規フッ素化反応も精力的に開発されている。
本総説では,直近10年間の間に報告されたモノフルオロ化反応に焦点を当て,生成物のC–F結合の種類別(1. フッ化アルキル, 2.α-フルオロカルボニル/スルホン酸/ホスホン酸, 3. フルオロエーテル, フルオロアルコール, 4. フルオロアミン, 5. 芳香族フッ素化合物, 6. フルオロアルケン, 7. アシルフッ化物)に各々反応形式と触媒について詳しく述べる。

 ついにでました。おそらく有機合成化学協会誌初めての50ページ超えの総説です。なぜコレをかいたかは、総説の最後に記載しましたのでそちらを御覧ください。その理由の他に、そもそもは有機合成化学協会誌の編集委員のときに、「総説が最近少ない、どうしたら増やせるか?」という議論があり、

「いやそもそもここにいるひと誰も書いてないんだから、この議論意味なくないか?自分たちで出しましょうよ。」

というところから始まりました(そのおかげで議論は終わってしまいましたが)。

有言実行で、総説を定期的に出し続けています。有機合成化学協会は比較的フレキシブルなので結構好きですし、学生のころからこの総合論文・総説にお世話になってきたので、恩返しがしたいこともありました。結構頭の体操になりますし、学生だけでなく自分たちの勉強になります。今回は貢献する・勉強するの域をこえて、大変すぎて「やめればよかった」と何度も思いましたが、なんとか脱稿することができました。

結果、50ページを超えて、有機合成化学協会誌1号ジャックしてしまいました。コロナの「宿題」としてはじめた須藤さん、そしてチェックを手伝ってくれた研究室の皆さんに感謝です。

山口潤一郎

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