Decarbonylative Aryl Thioether Synthesis by Ni Catalysis
Ishitobi, K.; Isshiki, R.; Asahara, K. K.; Lim, C.; Muto, K.; Yamaguchi, J.
Chem. Lett. 2018, Advanced Publication
DOI: 10.1246/cl.180226
本研究では、チオエステルの脱カルボニル型チオエーテル合成法の開発を行い、高収率でチオエーテルが得られる条件を見いだした。すなわち、ニッケル/PnBu3もしくはニッケル/dppb触媒存在下、炭酸ナトリウムを添加し、様々なチオエステルをDMFまたはトルエン中、150 °Cで12時間反応させることで望みのチオエーテルが得られる。適用できる基質は多岐にわたり、桂皮酸チオエステルや、アルキルチオエステル、ベンジルチオエステルなど、アリールチオエステル以外のチオエステルも適用できる。電子求引基、電子供与基、ハロゲン、エステルなど、種々の官能基を有するアリールチオエステルや立体的に混み合ったチオエステルでも良好な収率で対応するチオエーテルが得られる。
石飛・淺原(キティ)の4年生(現在M1)論文デビュー作。石飛・一色のダブルファーストオーサーです。この反応、実は元々2年以上前に特許も発表もしていました。ただ、有機金属の大家の山本先生らによりですでにRh, Pdで触媒的な反応が報告されており、ニッケル触媒で安価であるというという利点しかありませんでした。そこで当時の発見者の瀧瀬博士には、独立してからの4年生のテーマとしてやるからとっておきたい、もっとチャレンジングなテーマをやってほしいということで、2年間なにもしてませんでした。
そういうわけで、昨年から4年生石飛くん(当時4年生)のサブテーマとして触媒最適化からはじめました。実は他にもっと面白い反応をみつけていたので、他の反応を検討していたところ、1つ類似の論文が海外のっ研究者より出されてしまったので、”エース”一色君と、当時他の反応を開発していて伸び悩んでいた淺原キティくん、研究室に来たばかりのCassの練習台としてチームとして論文作成をはじめました。すると、ほぼ同じ内容が続けて2報だされてしまったので、審査が早い日本の欧文誌Chem Lettに投稿したといった背景です。このご時世、簡単に着手できる反応開発は容赦ないですね… 毎年自分に課しているノルマ「Chem Lettに最低1報を出す」を早々に達成できたのでよしとします。
いずれにしても、おめでとう!一色君はこれで4報目? 5月までに7報に到達します。Cassはラッキーパンチなので実験技術を磨いてがんばろう!
山口潤一郎